はじめに

令和4年3月1日(火)に,「筑波大・富山大・京大等によるCREST CyborgCrowdプロジェクト」が,継続的な災害状況調査のためのAI,オンラインワーカ,現地ワーカの連携のための実証実験を共同で実施しました.

2019年10月に実施した「世界初の国際サイバー防災訓練」では西日本豪雨災害の経験を踏まえ,わが国を中心に世界が有する知識や技術を最大限に活用し,いかに迅速に被災状況(浸水域)を把握できるかについての実証実験を実施しましたが,その成果を踏まえ,より詳細な浸水状況の把握,航空写真や衛星写真の入手を待たない状況把握,刻々と状況が変わる浸水状況の継続的な監視,等を目的として,サイバーワールドにおけるオンラインタスクだけではなく,現地ワーカによるフィジカルタスクも含めて,より困難な「AI,オンラインワーカ,現地ワーカの総力結集」を,オンデマンド,かつサステナブルな形で実現するための基礎技術の確立を目指すものです.

実験概要


本実証実験では,2018年の西日本水害,2019年の台風19号による福島県水害のデータを実際に利用し,AI,オンラインの人間クラウドワーカ,現地タスクを行う人間ワーカが次のように連携した実験を行います.

(1)(2) まず,当時のツイッターの中から,これらの水害の現地状況が判定できる写真を選択するタスク,および,それらの写真の位置を推定するタスクをクラウドソーシングプラットフォームCrowd4Uによって発行します.

(3) この作業は,オンラインクラウドワーカおよびクラウドワーカによって開発されたAIワーカが実施します.

(4)Flood Damage Estimation AIが,その時点で入手された写真から水害の程度を推定し,さらに必要な写真について,撮影のための追加のタスクを発行します. 

(5) 写真撮影のための追加タスクは,オンラインでは作業できない「フィールドタスク」となるため,ワーカを見つけることが一般には困難になります.本実証実験ではより多くのワーカにタスクに興味を持ってもらうための手法を導入し,タスクの実施可能性を向上させます.

(6) (7)これらのプロセスにより,Flood Damage Estimation mapの最新の状態が入手され,災害対策本部などに届けられます. 

災害状況把握という全体のゴールを対象に,(1)オンラインで作業を行う不特定多数の群衆(オンライン人間ワーカ),(2)これまた群衆によって開発されたブラックボックスAI(オンラインAIワーカ),(3)現地でフィールド作業を行うの3種類の全く異なるワーカをその場でリクルートし,その場でタスクを最適に割り当てて効率よく作業を進めるという問題にチャレンジしています.

利用データ


今回の実証実験では,下記のTweetデータを利用しました.

〇西日本豪雨(真備町)


2018/7/7朝に堤防決壊  
・範囲:倉敷市全体が入る範囲 
・期間:2018/7/6~2018/7/13 

〇台風19号(郡山市)


2019/10/12に本土上陸
・範囲:郡山市全体が入る範囲 
・期間:2019/10/11~2019/10/18 


2018年西日本大水害 (Wikipedia より)


2019年台風19号 (Wikipediaより)

実験機関

JST-CREST CyborgCrowdプロジェクト

筑波大学,富山大学,京都大学等多くの大学,
支援組織から構成されています.

本実証実験は,主としてJST-CREST「人間と調和した創造的協働を実現する知的情報処理システムの構築」領域(研究統括:萩田 紀博)の助成を受けて実施いたします. 

利用タスクについて 

 1

ツイートと写真を見て,被災地の様子を表す写真であるかどうかを判定するタスク (オンライン人間ワーカ,AIワーカが実施)

2

写真について,その写真が行った場所を推定するタスク (オンライン人間ワーカが実施)
- 写真に写っている情報と現地の地図情報をつきあわせて場所を推定するタスク
- 推定結果の確認タスク (画像参照) 

3

写真追加のためのフィールドタスク(人間ワーカが実施).

本実験に関連する研究発表

(予備実験に利用した技術を含む) 

01

Seungun Kim, Masaki Matsubara, and Atsuyuki Morishima:
Analysis of Hand-drawn Maps of Places in Natural Disaster Pictures, IEEE HMData 2020, Dec. 2020.

02

Masaki Kobayashi, Kei Wakabayashi, Atsuyuki Morishima,
゛Human+AI Crowd Task Assignment Considering Result Quality Requirements", The ninth AAAI Conference on Human Computation and Crowdsourcing (HCOMP2021), Vol.9, pp.97-107, November 14–18, 2021,

03

田中絵璃菜,伊藤 寛祥,松原 正樹,森嶋厚行.一貫性の原理に基づくフィジカルクラウドソーシングの効果的なタスク分割・依頼方法, DEIM Forum 2022, March 2022.

 MIND プロジェクトメンバー

(2022.2.1現在)(*本防災訓練システムを実装) 

名前

所属

研究領域

*小林正樹

筑波大学大学院博士後期課程

クラウドソーシングとAI

*Yixin Zhang

京都大学大学院博士後期課程

SNSと機械学習

*金 承彦

波大学大学院博士前期期課程

クラウドソーシングによる写真位置情報推定

田中絵璃菜

筑波大学情報学群

フィジカルタスクリクルートメント

井ノ口宗成

富山大学

自然災害対応とIT

田島敬史

京都大学

データ工学

松原正樹

筑波大学

認知科学,ヒューマンマシンインタラクション

北原格

筑波大学

コンピュータビジョン

宍戸英彦

筑波大学

コンピュータビジョン

田村圭子

新潟大学

自然災害対応

鳥屋剛毅

秋田大学

コンピュータビジョン

森嶋厚行

筑波大学

データ工学・クラウドソーシングプラットフォーム